ブッフェ式のサラダ
牛肉の赤ワイン煮込み
コーヒーとアップルパイ
沼隈の道の駅へ行った帰り、ちょうど昼時だったので、
以前から気になっていたレストランへ入った。
民家を改装した店で、50才代とおぼしき女性が一人で切り盛りしていた。
定番でオススメだという牛肉の赤ワイン煮込みを頼んだ。
注文を受けた彼女は、店内に流れるショパンの子犬のワルツに合わせて
ハミングしながら料理に取り掛かった。
彼女はきっとおおざっぱな性格に違いない。
店の駐車場に着いた私を出迎えたのは、縁側で黒いタイツ姿で伸びをする
彼女だった。
そして、恥ずかしがる風もなく「今日は暑いわねぇ」と、笑顔で話し掛けてきた。
いま掃除が終わったばかりだと言っていたが、
椅子の座面にはパンくずがいくつも落ちていた。
盆に乗せてきたナイフとフォークとスプーンと箸を4本まとめてわしづかみにし、
テーブルの端にガシャと乱暴に置いて、そして並べた。
決して機嫌が悪いわけでもなんでもない、それが彼女の常らしかった。
そのおおざっぱさは、そのほかの部分にも現れていて、
食器類は、よく見ると水滴の乾いた跡が残っていた。
コーヒーはカップの縁に垂れていて、
持ち上げるとソーサーに黒い輪ができていた。
料理やケーキに添えたブロッコリーやミントの葉は、ひっくり返っていた。
しかし、味はよかった。
本当に美味しかった。
店内(というより室内)は暖炉があって、山小屋風なので、
料理上手なおばあちゃんちに遊びに来た気分だった。
他にお客さんはいなくて、彼女は料理を出すだけ出したら奥へ引っ込んだ。
静かに流れるショパンを聴きながら、のんびり手料理をいただいた。
とても幸せなひとときだった。