2010年5月29日土曜日

ゾッとする話

人間の暗い部分に興味を持つ人間が、必ずハマる事件がある。


「津山事件」


昭和初期に中国地方の寒村で起きた、一人の若者が一晩のうちに村人三十人を惨殺した事件である。


横溝正史の小説「八ツ墓村」で、主人公の父親が起こした事件のモチーフにもなった。


私は、その「津山事件」について調べているうち、実際にその村に行ってみたくなった。


事件を起こした若者の家があった場所に立ち、そして、彼が殺戮を繰り返しながら駆け抜けた道筋を辿ってみようと思った。


私の家からその村まで車で4時間以上かかる。


綿密な計画を立て、意を決して行かねばなるまいと、時期を伺っていた。


そんな頃だった。


バレエのレッスンから夜遅くに帰宅し、自室に入ると、机の上でうごめくものがあった。


よく見ると、体長7、8cmほどの若いムカデだった。


灯りが点いて、急に明るくなったことに驚いたのか、若いムカデは読みかけの本の隙間に入り込んだ。


本は、若い僧侶が書いたエッセイだ。


本の表紙を軽く押さえると、若いムカデは這い出してきて、今度はお守り代わりに置いている小さな般若心経の綴りに入り込もうとした。


私は寸前でお経を取り上げ、若いムカデに殺虫剤を吹き掛けた。


若いムカデは苦しそうに身をよじらせていたが、しばらくして動かなくなった。


亡くなった人は、虫に姿を変えて、想いのある人に会いに行くと言われる。


この若いムカデは、私に会いに来た誰かなのか?


若いムカデが現れたのは、5月21日。


「津山事件」のあった日である。

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