2010年11月13日土曜日

指導者について

その道に秀でるには、本人の努力が一番ではあるけど、
良き指導者に恵まれることも重要だと思う。


教え子が今、何をしようとしているのか、何に悩んでいるのかを読み取り、

的確な言葉を投げ掛ける。
それが、良い指導者ではないかと思う。


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私がバレエを習い始めてからずっと指導を受けているC先生は、

そういう意味でとても良い指導者だ。


私は、習い始めの頃、全くレッスンに付いていけなかった。
振付も覚えられない、音には遅れる。
センターレッスンでは、ただ立ち尽くして終わることも少なくなかった。


C先生は、初心者には叱ることなく、笑顔で根気強く何度も説明する。
だからといって、それに甘えていては、いつまで経っても初心者のままである。


初心者から抜け出したい私は、とにかく何かひとつに集中することに決めた。
まず、振付を完璧に覚えることを止め、代わりに爪先だけは必ず伸ばすことにした。
私の心の変化に気付いたC先生は、私の爪先を手で伸ばしながら、こう言った。
「筋力を付ければ、もっと伸びそうね」


私みたいな落ちこぼれのことも、ちゃんと見てくれている。
そのことが何よりもうれしかった。
私は、C先生にもっと見てもらえるように、もっとアドバイスしてもらえるように、

一所懸命に努力した。


バレエを始めて3年たったある日、C先生に言われた。
「最初はどうなるかと思ったけど、最近やっとバレエらしくなってきたわね」


私は心の中で、「やったぁ!」と叫んだ。
多少なりともバレエらしくなったと認められたのだ。こんなうれしいことはなかった。
それから私は、より一層努力した。


確かに私は努力したけれど、たいした努力ではない。
私がした程度の努力は誰でもしている。
私がここまでのレベルまで上がれたのは、C先生の指導があったからこそだ。


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漫画家 赤塚不二夫さんの葬儀で、タレントのタモリさんが弔辞で言ったそうだ。
「私も、あなたの作品のひとつです」


その言葉を借りれば、 私もC先生の作品のひとつだ。

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